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お片付け

今日は皆さまからのご質問が多いお雛様のお片付けについてご説明申し上げます。
お雛様のお片付けで気を付けて頂きたいことはたった2つだけ!『湿気』と『ほこり』です。

「湿気」はカビの原因となりますし、「ほこり」はそのままにしておくとシミや変色、虫食いの原因となりますので注意が必要です。ですが対策は簡単なのでご安心を。

「湿気」対策はお片付けにカラッと晴れた日を選んで頂き、10月中旬から11月初旬の湿度の低い秋晴れの頃にお人形の入っている箱の蓋を開け、中の空気を入れ替えるだけ。そしてお人形の箱を床ではなく少し高い位置に保管して頂ければ心配ありません。もしお人形がビニールに入っている場合は不織の袋に入れ替えてくださいね。


また「ほこり」対策も簡単です。お人形の配送時に同梱されているお手入れセットの手袋をつけて、同じくお手入れセットの刷毛で衣装のホコリを払うだけ。お顔や髪の毛にホコリがついている時には、カメラのレンズなどに使うゴムやシリコン製の手動のエアダスターで軽くシュッシュっと空気をかけてあげれば大丈夫です。

最後に、お人形は一つ一つ不織の袋に入れてから(ビニールからは出してあげてください)箱の中に収めてあげてください。念のため、お人形用の防虫剤も一つ箱の中に入れてあげればさらに安心です。

是非ご参考になさってください。

端午の節句に甲冑を飾る理由

梅の香りが春の訪れを教えてくれる心地良い日、皆さまどうお過ごしですか?

今日は五月五日の端午の節句に甲冑(鎧と兜)をお飾りする理由についてお話しをさせてください。

江戸時代、徳川家が行った世継ぎである男児の誕生を盛大に祝う行事が庶民にも広まり発展した端午の節句ですが、始まりは古く日本書紀まで遡ります。

香り高く薬効のある菖蒲や蓬で厄を払う風情のある美しい行事と、枕元にお人形を飾り赤ちゃんの厄を移した風習が、後の武家の行事と合わさり今に伝わったと言われています。

そして実は武家の男児らしく勇ましく育つことを願い甲冑が飾られただけではなく、甲冑には武具として身を守る以上の力があると信じられていました。

その一つの例として、皇室では古くから男子が誕生すると、檜の薄板で作られた兜に、出し(だし)と言う美しい造花を挿した『檜兜』(ひのきのかぶと)を 神が宿る依代(よりしろ)として飾るしきたりがあります。依代とは神さまが降りる場所ですから、何とも力強いお守りです。

また室町時代に書かれた『太平記』には不思議な力を宿す鎧の伝説が書かれています。
藤原秀郷(平安時代中期)が大百足を倒す百足退治伝説の中で藤原秀郷は龍王からお礼に飛来矢(ひらいし)という大鎧(格の最も高い正式な鎧)を贈られます。現在も鎧の一部が国の重要文化財として栃木県唐沢山神社に保存されていますが、この鎧は着用しているとどんな矢にも当たらなかったと言われ、寺院に収められてからは『飛来矢大権現』として崇められたそうです。

昔も今も甲冑を単なる武具としてではなく神聖な力を宿し我が子を守る『お守り』として飾ってきた私たち日本人。親の愛がいっぱい詰まった、優しい端午の節句を是非是非多くの方に楽しんで頂きたいなぁ。

Profile

原 裕子

1975年8月28日生まれ。

無形文化財に指定された原米洲を祖父に持ち、母は原孝洲。

女子美術大学卒業後、ロンドンに美術留学。帰国後、孝洲の元で三世人形師として修行開始。

2008年に娘を出産。目標は日本文化の素晴らしさを世界に、そして後世に広く正しく伝えていくこと。