お口に広がる、秋の味。ぽってりとした実りをデザートに

重陽の節句

秋の深まりを感じ、
とりどりの木の実が実る頃。
数ある植物や食材の中でも
ひときわ神聖な「菊」を
いただく習わしのある、
重陽の節句が到来します。

「五節句」の中でも重要なものとされているのが、9月9日の「重陽の節句」です。

偶数は「陰」、奇数は「陽」と考えられている陰陽の考え方に基づき、数字の中で「最大の奇数」=陽の数にあたる「9」が「重」なることから「重陽」の節句と呼ばれるこの日は、なんと言っても菊の存在が欠かせません。

旧暦の9月9日は、現在の10月中旬頃。この頃に美しく咲く菊は、神話の世界からずっと「日(陽)と月(陰)、両方のエネルギーを持つ」「食べると心の目が開き、穢れを清めることができる」と信じられており、尊ばれてきました。
現在でも、菊は長寿のシンボルとしても知られています。

お節句の前日である9月8日には菊の花の上に絹の綿を被せ、翌朝、その朝露と菊の香りが移った綿で体を拭いてお清めをし、菊をさまざまな形でいただいて厄払いと長寿を願ってきました。このことから、このお節句は「菊の節句」とも呼ばれています。

そこでご提案したいのが、豊穣の秋を思わせるイチジクを赤ワインでコンポートにして、重陽の節句の時期に旬を迎える栗を合わせたデザートです。
「不老長寿の果実」とも言われるイチジクは、世界中の伝説の中でも縁起の良いものとして登場する果実。旬のジューシーなイチジクをコンポートにしたことで、ミルキーなバニラのアイスクリームを添えても美味しく、おしゃれにアレンジして楽しめます。

さらに、ビタミンCやビタミンE、ビタミンB2などを豊富に含み栄養価の高い食用菊をきれいに散らしました。
これは、重陽の節句にちなんで菊の花びらを散らした「菊酒」を飲む風習にヒントを得たアレンジでもありますが、日本酒ではありませんが、赤ワインという同じお酒の要素が加わっているので、不思議と、どこか共通する落ち着いた和の要素を感じます。

また、重陽の節句には神代からお供え物として大切にされてきた栗をいただく風習もあり、「栗の節句」とも呼ばれていました。 そんな栗も添えて、無病息災や長寿を願う重陽の節句にぴったりな上品なデザートです。 神秘的なだけでなく、滋養に富んだ菊や栗の力をいただいてみてはいかがでしょうか。

無花果のコンポート 栗と菊の花

◎材料(4人分)

  • 無花果 6個
  • 菊花 適宜
  • 赤ワイン 300cc
  • 100cc
  • グラニュー糖 80g
  • シナモンスティック 1本
  • 栗の甘露煮(市販) 8個

◎作り方

  1. 鍋に赤ワイン、水、グラニュー糖、シナモンスティックを入れて火にかける。
  2. 1が沸騰したら、グラニュー糖が溶けたことを確かめて、火を止める。無花果を入れて蓋をし、そのまま一晩起いて、翌朝冷蔵庫へ入れておく。
  3. スープ皿に2の無花果を一個と半分盛り付け、栗の甘露煮を二つ添える。
  4. 赤ワインのシロップを注ぎ、最後に菊花を散らして出来上がり。

Photo: Kyoko Kataoka

Text: Hiroko Hara, Kaoru Tateishi

Recipe: 球体食堂