原裕子

人形師として

私は、もともと美術や芸術が好きでしたが、お人形の仕事はあまりにも身近すぎて、関心はほかに向いていました。

しかし、留学を機に人形師という仕事を見直したとき、その道に踏み出すことへの迷いはまったくありませんでした。人形師としての仕事の喜びや魅力は、自分にとってかけがえのないものだと思えたからです。

歴史をつなぐこと

人形師としての道を歩き始めて、自分の中に祖父や母の存在を強く感じます。継承していると思えることは、歴史に培われた技術はもちろんですが、それよりも大きいのは創作することへの“強い想い”です。よいものを見分ける選択眼、それを形にするぶれない軸。いつの日からか“ものづくりの感性”と呼ぶべきものが私の中に根付き始めました。

いまできること

お人形を創作する工程には、多くの専門職人が関わっており、人形師は総合プロデュースの役割も担っています。

現在、ほかの若手人形作家の作品や高度な職人技のご紹介、コラボレーション作品の企画や展示など、新たな創作活動にも挑戦しています。日本の伝統文化や伝統行事を国内外に広める活動にも、今後は携わっていきたいと思っています。

大切にしたいこと

「忙しい生活の中で、子どもの誕生を機に家族が集い、日本の伝統文化を毎年楽しめることに感謝したい」というお声をよくお客様からいただきます。お子様の幸せを願う節句のお祝いは、形にとらわれずにそれぞれのご家庭に合う行事であってほしいと願います。この美しい伝統文化をつないでいくことも人形師としての使命。これからも想いを込めたお人形をおつくりしてまいります。

原裕子HARA HIROKO

幼少より祖父である初代原米洲から直接、人形制作の手ほどきを受ける。女子美術大学卒業後イギリスへ留学し、美術、インテリア、ファッションを学び、帰国後は五色株式会社に入社。母である原孝洲のもとで人形師としての修行を再開し、2018年に三世を襲名。人形制作と同時に日本文化の素晴らしさを国内外に広める活動も行っている。